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お知らせ

再発防止策への取り組みについて

2007年11月9日

日本畜産株式会社
代表取締役 小林茂之

弊社が、2007年10月20日に公表した「鹿児島黒毛和牛コロッケ」の不適正表示にかかわる問題(以下「本件問題」といいます)では、お客様、お取引先様、行政当局をはじめとする多くの方々の信頼を損ね、大変なご迷惑をおかけしました。


弊社は、このような不祥事は企業の存続にも影響を及ぼしかねないものであるという反省のうえに、10月21日付で社長を委員長とするコンプライアンス委員会を発足させ、本件問題の直接的な原因だけでなく、組織的な原因にも踏み込んで検討を行い、再発防止策を取りまとめました。


弊社は、この再発防止策を着実に実行することにより、一日も早くお客様を始めとする関係者の皆様の信頼を回復できるよう、誠心誠意努力してまいります。




1.本件問題及び再発防止策の基本的な考え方


本件問題の概要


本件問題は、弊社が2003年から食品商社を通じて関西地区の特定の大手スーパーマーケット(以下「当該大手スーパー」といいます)に対し、「鹿児島黒毛和牛コロッケ」と表示して販売していたコロッケ(揚げていないもの。以下「当該コロッケ」といいます)の原料に、2004年ごろから鹿児島産黒毛和牛以外に他府県産の黒毛和牛及び国産牛の挽き肉を混入させていたというものです。


鹿児島黒毛和牛肉の使用割合と鹿児島産以外の和牛肉及び国産牛肉の混入の度合いは、2007年9月出荷分の平均では、鹿児島黒毛和牛肉が16.9%、鹿児島産以外の黒毛和牛が46.7%、その他の国産牛が36.4%でした。ただし、時期及び個々の商品により、その割合は異なっています。



本件問題の原因


本件問題の直接的な原因としては、以下の2点が挙げられます。


第1は、製造を担当する惣菜事業部から精肉事業部への原材料の社内発注が口頭で行なわれていたため、実際の作業者には「鹿児島産黒毛和牛肉100%」であるべきことが確実に伝わらなかったため、他産地の黒毛和牛が使用されたことによります。


第2には、大手スーパーでの特売等への対応のため、通常の数倍の数量の発注が十分なリードタイムを置かずになされることがしばしばあり、その際に欠品を生じることでお客様に迷惑をおかけしないことのみを優先し、不足分を自社牧場産の他の国産牛肉で補ってしまったことによります。



本件問題の背景


弊社は、「昭和38年に福山市瀬戸町で牧場を始めてから変わらない3つのこだわり」として「安全にこだわります」「美味にこだわります」「牧場産直にこだわります」の3点を経営理念としてかかげ、そのもとに生産、加工、販売の一貫流通システムを確立してきました。また、「安全」へのこだわりの具体化として、「生産性よりも安全性」を日ごろから強調し、日常の従業員の教育を徹底するとともに、2004年以後、最新の衛生管理システムを整えた工場を建設するなどの設備投資を行ってきました。


牧場における生産過程では、当初から発育ホルモンの使用を避け、また動物性飼料を全く含まない自家配合飼料を使用することでBSEのリスクを回避するなど、とりうる限りの安全対策を実施しておりました。さらに、品質管理室を設置し、精肉や惣菜製造過程においもて安全性にかかわる問題が発生したときには、その都度、組織的に工程、設備の改善や品質チェック項目の追加による恒久対策を実施し、継続的に製品の安全性を向上させる改善のサイクルを確立してきておりました。


しかし、当該コロッケにおける不適正な表示にかかる問題では、「安全性」「美味」という2つの経営理念によるモノサシではかる限りは重要な問題とは認識されにくかったことが、今回の事態を招く背景となっておりました。



再発防止策の基本的な考え方


弊社は、本件問題の再発防止策を講ずるにあたっては、直接原因である惣菜事業部から精肉事業部に対する不明確な社内発注システムの適正化を中心とした対策を講じることに加え、弊社の経営理念が今日のお客様の信頼に応えていくためには十分なものではなくなったことが背景にあることを認識し、その見直しを含めて取り組む必要があるものと考えております。そうでなければ、再びお客様の信頼を失うような問題が再び別の形で起きることを防ぐことはできないからです。


まず、直接原因である惣菜事業部から精肉事業部への社内発注システムの適正化については、これを文書化することにより不適正な表示につながる社内発注を防止します。また、その運用管理を含めた惣菜事業部と精肉事業部との円滑な情報共有のために、新たに生産管理部を設置し、品質管理室において、その運用状況及び表示の適正さを定期的に検査する体制を整えます。


また、弊社の経営理念をお客様の「食の安心」への期待に応えることという観点から見直し、それを実効化させるためのコンプライアンス体制を構築していきます。



2.正確な表示を保証する体制の確立について


社内発注の文書化


本件問題において鹿児島黒毛和牛コロッケ用の挽肉として、精肉事業部から惣菜事業部に他府県産黒毛和牛の挽肉が供給された原因は、社内発注が口頭で行われたため、惣菜事業部での納入先からの受注担当者、惣菜事業部から精肉事業部への発注担当者、精肉事業部での社内受注担当者、精肉事業部での加工作業担当者と順次注文が伝えられるうちに「鹿児島」産であることの指定が正しく伝わらなかったことにあります。


そこで、社内発注を「製造依頼書」という文書で行うことにより、作業者への指示が明確に伝わるようにしました。当該文書には、名称、産地、規格、製品規格(重量)、注文数等の項目が設けられ、惣菜事業部及び精肉事業部の各担当者及び責任者が押印又はサインすることにより責任を明確化し、最終的に品質管理室で保管します。



原料肉移動にかかる記録体制の整備


本件問題では、工場内での原料肉の移動、処理にかかる記録方法が統一されていなかったため、当該コロッケにおける不適正な表示の実態の検証に時間を要しました。今後、過失による表示ミスを適時に発見して是正したり、品質管理にかかる内部監査を的確に実施したりすることにより、再発防止を図るためには、原料肉異動にかかる記録体制の整備が不可欠だと判断しました。


そこで、工場において原料肉の受け入れの際にロット番号を付与し、原料肉にロット番号票をつけて移動させることとし、特定の原料肉が社内でどのように移動・処理されたかという状況を記録していくこととしました。ロット番号は、牛肉については法律に基づく個体識別番号を使用し、豚肉については独自に採番したものを使用します。これにより、特定の原料肉がいつ受け入れられ、どの商品に、どの分量が使用され、出荷されたかについての検証が容易に可能になります。



品質管理室の機能強化


重要なリスク管理部門として品質管理室の業務範囲を改めて規定し、その権限の強化を図ります。


品質管理室は、従来の業務に加え、生産管理部と協力して、商品の適正表示と原料肉移動にかかる記録体制の整備につとめ、それらの記録を一元的に保管管理するものとします。その前提として、全社の作業手順、作業指示に関するマニュアル整備を統括します。また、定期的かつ計画的に商品の適正表示にかかわる点検を実施することで、不適正な表示にかかわる問題を早期に把握し改善を指示します。さらに、表示、食品衛生等に関する法令・通達等の改正等の状況を定期的に把握し、コンプライアンス委員会を通じ全社への周知を図ります。


品質管理室の担当者の他の業務との兼務を廃止し権限行使の独立性を高めます。また、社長はじめ経営幹部は、全社に対し品質管理室の指示の遵守を求めるなど、その権限行使が円滑に行えるように支援していきます。


生産管理部の創設


本件問題では、惣菜事業部と精肉事業部との情報の共有が十分でなかったことも原因でした。この対策としては、社内発注の文書化や、事後検証のための品質管理部の機能強化という対策をとっていきますが、これに加え、これまで惣菜事業部と精肉事業部で独立して行っていた生産管理について、全社の生産管理部を設けることにより両事業部を一貫して行うこととしていきます。



3.コンプライアンス体制の確立について


概要


本件問題の根本的な原因は、食品表示に対する法令及び消費者の求める「食の安心」に対する理解の不十分さにあり、そのことが表示の信頼性に影響を与える作業工程の不備の改善の遅れや、受注数量への対応のために一部に表示とは異なる牛肉の使用といった不適切な対応につながっておりました。今般、失った信頼を取り戻すためには何よりも「食の安心」を第一とするコンプライアンス体制の確立が不可欠であると認識し、緊急に幹部社員によるコンプライアンス委員会を設置し、その審議を経て以下の施策を実施していくこととします。



企業理念の見直し


弊社は、「(生産性よりも)安全性」と「美味」を掲げた企業理念を公表し、それに沿った施策を実施してきました。しかし、本件問題は、「安全性」「美味」という2つの経営理念によるモノサシでは重大な問題としては認識しにくいものでした。弊社は、その反省に立ち「安全、安心、美味しい笑顔」をテーマに、「1.食の安全そして安心がすべての基本です」「2.笑顔で食べていただける美味にこだわります」という2つの理念と、その実現のための行動指針を定めました。



コンプライアンス委員会の設置


弊社のコンプライアンスに対する施策の推進機関として、コンプライアンス委員会を設置します。コンプライアンス委員会は、社長を委員長とし、常勤役員及び各部門の幹部社員を委員として構成し、原則として毎月第1金曜日に開催します。


コンプライアンス委員会では、主としてコンプライアンス推進計画の策定及び実施状況の確認、各部門のコンプライアンスに関する状況の報告(お客様からのクレームの状況、ヘルプラインの受付状況等)と委員の意見交換および業務に関連する法令の改廃等に関する報告を行います。なお、重要なコンプライアンスに関する問題が発生した場合には、臨時にコンプライアンス委員会を開催し、その対応を協議していきます。



ヘルプラインの設置


日常の業務の中では、しばしは法令や企業理念に従った行動が困難な状況が生じがちです。そのような場合に、従業員の適切な行動を支援するために、社内にヘルプラインを設置します。



教育研修体制の充実


企業理念の定着と業務に関する法令知識の習得のために、教育研修体制を整えていきます。コンプライアンス委員会の下に教育研修委員会を設置し、教育研修計画を定め、教育研修を計画的に実施していきます。当初は、本件問題を踏まえ、新企業理念及び食品表示にかかわる研修から実施していきます。



社内コミュニケーションの強化


企業コンプライアンスにおいては、さまざまな問題について自由に意見を交わすことのできる風とおしのよい企業風土の醸成がきわめて重要です。コンプライアンス委員会は、その一つの場となりうるものですが、さらに全社的なコミュニケーションを増進するための施策を積極的に講じていきます。 


以上